気になる「大学無償化」の本格化、その3、「地方を支える金の卵、非大卒層」

 前回に引き続き「非大卒」について、島根県出身の学者、吉川徹(とおる)、静岡大学助教授の意見を引用します。

 

 

【朝日新聞記者質問】 

 高卒層は職場になじめず数年でやめるケースも多いようです。進学して職業選択の意識を高めたうえで社会に出るのがよいのでは?

 

【吉川徹、静岡大学助教授回答】

 かっては商業高校(工業高校)や農業高校が多く、高校生には複数の選択肢がありました。今は大半が普通高校になって進学が最優先され、就職層を育てている自覚が教育現場で希薄になっています。

 

 18歳の若者が大学に行っても、地元に残って働いても、幸せと思える社会にする。そのために非大卒層も大卒層と同じように、20代前半までに社会で生きていく上での基礎を作れるようにすべきです。

 

 例えば、安定的に正規職につけるよう、若い非大卒層を雇った企業には月5万円ずつ援助するといった支援をする。彼らは色々な仕事を経験して失敗するかもしれませんが、「長期インターン」のようなものと考えてはどうでしょうか。

 

 政府は外国人労働者の受け入れを拡大しようとしていますが、その前にまず自前の非大卒層を有効活用する体制を作るべきです。

 

 

【朝日新聞記者質問】 

 平成の「失われた20年」で、非正規社員が増えました。苦しいのは何も若者だけではないのでは?

 

【吉川徹、静岡大学助教授回答】

 大卒層であっても、非正規社員になって貧困に陥る現代世代が増えました。ロストジェネレーションとも呼ばれる、先行きが不安定な彼らの賃金格差を是正する方が、無償化よりももっと大切です。

 

 消費税の財源は、彼らへの再配分にもあてるべきです。政府は、今回の無償化で次世代が大学に行けると強調しますが、現役世代の格差はむしろ助長されることになります。

 

 

 

【朝日新聞記者、日浦統氏のコメント:】

 

 高齢化が進む地方に残り、消滅も危惧されるコミュニティーを支える非大卒層を、吉川さんは現代日本の「金の卵」と位置付ける。大卒層だけでなく、非大卒層への目配りも欠かせないとの指摘は説得力を感じた。